ポスターアーカイブ

2009年5月「ミュージカル特集2」

The Band Wagon(バンド・ワゴン)

ミュージカル映画、数あれど、これこそベストと言う人も少なくないフレッド・アステア、シド・チャリシー主演作品。ミュージカル映画の傑作オムニバス「ザッツ・エンターテインメント」の主題歌のオリジナルこそ、この映画から生まれた一曲です。

一度落ち目になったミュージカルスター、トニーを友人夫妻が新作舞台に呼び戻すものの、芸術家きどりのプロデューサーに因って、一時は惨たんたるモノになってしまいます。しかし、トニーは自分の秘蔵の絵を売り、明るく楽しいショウへと変貌させ、大成功を収めます。

アステアとチャリシーの「ガールハント・バレエ」はその部分を見るだけでも価値あり。特にアステアは、当時53歳!!信じられないダンスをしっかりと見せてくれます。

監督のヴィンセント・ミネリは、言わずと知れたジュディ・ガーランドの夫でもあり、ライザ・ミネリの父親。オスカーを受賞した「巴里のアメリカ人」はあまりにも有名ですが、その後、「恋の手ほどき」で作品賞と共に、監督賞も受賞しています。

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ウエスト・サイド物語(West Side Story)

1957年にブロードウェイで、ゲイのアーサー・ローレンツ(脚本)、バイセクシャルのレナード・バーンスタイン(作曲)と、これまたゲイのスティーヴン・ソンドハイム(作詞)によって生み出された傑作ミュージカルの映画化。しかし、何と言っても、何故かゲイではないジェローム・ロビンズのこの映画における功績(原案・振り付け)は、お見事です。

白人で構成される不良グループ、ジェット団と、プエルトリコ人で構成されるシャーク団の闘いの中で、ジェット団の過去のリーダー、トニーとシャーク団のリーダーの妹マリアの叶わぬ恋を描いています。

現存しているこの映画で大満足なのですが、悔しいのは、半分くらい撮影した時点でロビンズが監督から降板させられたということです。 俳優に過度なトレーニングばかりをさせて撮影が一向に進まなかったというのは、仕方がないですが、彼がさらにメガホンを取っていれば、どのように変化していたか、観てみたかった。

ちなみに共同監督はその後、「サウンド・オブ・ミュージック」を撮ることになるロバート・ワイズです。

それにしても、マンハッタンを俯瞰で撮りながら、ズームアップしていくオープニングから、体育館でのダンス、「トゥナイト」の五重唱など鳥肌が立つシーンの連続です。

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シェルブールの雨傘(Les Parapluies de Cherbourg)

フランスでは、ほとんど製作されたことがないミュージカルを、ジャック・ドゥミ監督、ミッシェル・ルグランの音楽、そして当時新人だったカトリーヌ・ドヌーヴ主演作で作られたのがこの映画です。

全編の歌詞にメロディが付けられ、台詞が一切ない(当時、アメリカでも例を見なかった)という非常に珍しい形で発表されました。

フランスの港町、シェルブールで付き合う自動車整備工のギイと傘屋の娘、ジュヌヴィエーヴ。ギイに召集令状が届き、出征してしまうけれど、その後、ジュヌヴィエーヴはギイの子を妊娠し、宝石商と結婚。映画は6年後に、自身も結婚したギイのガソリンスタンドで二人が再会するシーンでエンディングとなります。

色とりどりの傘が雨の中を行き来する俯瞰ショットが美しいオープニング。そして全編に渡り、流れるルグランの哀愁を帯びた楽曲が心行くまで泣かせてくれます。それにしても、21歳のカトリーヌ・ドヌーヴはあまりにも美し過ぎます。

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マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)

1956年に舞台でジュリー・アンドリュースが主演を務めたミュージカルが当時、大スターだったオードリー・ヘップバーンに抜擢されたのがこの映画。とは言え、オードリーの声は「ウエスト・サイド〜」のナタリー・ウッドと同じく、マーニ・ニクソンが吹き替えをしています。

映画は、下町出身で、どうしようもない訛りを発する花売り娘イライザを言語学専門のヒギンズ教授が、社交界のレディに仕上げるまでを描きます。ドラマは、教授とイライザの恋愛を通し、イギリスの階級社会を風刺して見せていきます。

この映画では何と言っても、セシル・ビートンの衣装が全編に渡って、観客(と言うより、ゲイたち)の目を惹きます。(この衣装デザインは、その後、日本での舞台などに引き継がれています。ちなみに、これはオリジナルキャスト版の衣装。まったく違う。笑)そして、ジーン・アレンの美術も素晴らしい。2部の最初に出て来るアスコット競馬場での、モノトーンの配色をした見事なアート・シーンは生唾ものです。

ちなみに監督のジョージ・キューカーがゲイであったことは有名。(映画『ゴッド and モンスター』でも皮肉たっぷりに描かれています。)

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ダウンタウン物語(Bugsy Malone)

ギャングの抗争を、すべて子供たちで演じたイギリス産のミュージカル映画。その後「フェーム」「ピンク・フロイド/ザ・ウォール」「ザ・コミットメンツ」「エビータ」など音楽に関わる多くの映画を作ったアラン・パーカー監督のデビュー作品でもあります。

禁酒法下のニューヨークのダウンタウンでは、二組のギャング団が対立しており、ふとっちょサム一派は、マシンガンを持つダンディー・ダン一派に対して形勢不利。ダンの計略にはめられて、サムの手下のバグジーは情婦タルーラの誘惑で恋人の信用を無くしてしまうけれど、マシンガン強奪を企てみごとに成功を収めます。

普通ならマシンガンでの殺し合いに血なまぐさいギャング映画が、ここではパイ投げになるという楽しさ。全編に渡って、そのようなキッチュなワクワク感がいたるところに、溢れています。そして、何と言っても14歳のジョディ・フォスターが演じる歌姫の艶かしさ。この頃から、レズビアンだったと意識していたのかなあ。

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グリース(Grease)

ミュージカル映画が下火になって、ほとんど製作されなくなった1970年代、ブロードウェイで燦然と輝く名作72年の作品をビージーズなどを見つけた名プロデューサー、ロバート・スティグウッドが目を付け、ジョン・トラヴォルタ、オリビア・ニュートン・ジョン主演で大ヒットさせたのがこの学園ミュージカルがこれです。

50年代のアメリカ。夏休みに知り合ったダニーとサンディ。新学期、シドニーから転校してきたサンディと実は不良グループのリーダーだったダニーとの恋の行方を思いきり楽しく、描いていきます。

通常、ブロードウェイ・ミュージカルの映画化では、これと言った目だった楽曲は作られないけれど、 この映画はさすがスティグウッド!「愛すれど哀し」""Hopelessly Devoted to You""「愛のデュエット」""You're The One That I Want""など名曲が生まれてその後、リバイバル舞台に入れられたり、という珍しいパターン。

「サタデー・ナイト・フィーバー」でデビュー直後のトラヴォルタも確かに若いけれど、この時のオリビアは30歳!!その年齢で高校生を演じるというはコワイ!と話題になったけれど、今見ると目尻のシワも愛らしく思えてきます。

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ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge!)

昨今のミュージカル映画ブームを作ったのが、先月紹介した「シカゴ」のアカデミー賞がきっかけだと言われますが、厳密にはこの「ムーラン・ルージュ」から、と言えるでしょう。何と言っても、ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー主演、バズ・ラーマン監督作品ですから。

作家志望の青年クリスチャンは、パリ、モンマルトルにあるキャバレー、ムーラン・ルージュの新しい舞台で披露する歌詞を頼まれることから、大スター、サティーンと出会います。パトロンの公爵とクリスチャンを勘違いした彼女は彼の詩を聞いて、恋に落ちていきます。

ビートルズ、キッス、フィル・コリンズ、U2、デヴィッド・ボウイ、ホイットニー・ヒューストン、エルトン・ジョンなどの楽曲がメドレーになった「エレファント・ラヴ・メドレー」。これを歌うユアン、ニコールは見ものです。特にユアンの伸びる声は本当に素晴らしくて、その後、ロンドンの舞台で上演された「ガイズ・アンド・ドールズ」は本当に観たかったなあ・・・。ゲイ・アイコンでもあるカイリー・ミノーグが妖精の役で出演しているのも楽しいです。

ただし、まるで全編ミュージック・クリップを観ているような編集を個人的には、あまり評価出来ません。せめて、度派手なムーラン・ルージュの華麗なる舞台のシーン、じっくりと観させて欲しいと思いました。もの凄く期待していただけに、非常に残念でした。

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ヘアスプレー(Hairspray)

1988年にジョン・ウォーターズ監督(彼もゲイですね・・・)に因って作られたコメディが、2002年にブロードウェイの舞台に、そしてそれが改めてミュージカル映画化された作品です。

舞台では、「トーチソング・トリロジー」の脚本、主演で有名なハーヴェイ・ファイアステインがやった主人公の母親役を「グリース」以来のミュージカル出演となるトラヴォルタが巨漢の特殊メイクで演じています。

舞台は1960年代、テレビ「コニー・コリンズ・ショウ」に憧れるちょっと太めの高校生、トレイシーは、あるきっかけから番組のメンバーに。そして、ミス・ヘアスプレーコンテスト。彼女の起用を良しと思わない美人モデルアンバーとの一騎打ちとなります。

この映画では、当時まだ色濃く残っている黒人差別を始め、太っちょのトレイシーや、母親の容姿も含めた蔑視を、マイノリティの視点から描いているのがさすがジョン・ウォーターズ原案ものと思わせます。ちなみに、彼自身もちょい役で出演しているのはご愛嬌です。

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