ポスターアーカイブ

2009年6月「ミュージカル特集3」

Gentlemen Prefer Blondes(紳士は金髪がお好き)

マリリン・モンローとジェーン・ラッセルの競演ミュージカル、と言うよりも、マドンナの「マテリアル・ガール」がこの映画のパロディ、ということで知った人も多いでしょう。監督のハワード・ホークスは、何と言っても「赤ちゃん教育」が有名だが、それ以外の多くの映画から西部劇、男性映画の巨匠だと思われています。そのホークスの唯一のミュージカル映画がこの作品です。

リッチな青年ガスと婚約中のショウガール、ローレライは、パリで結婚するつもりでしたが、、ガスの父親の病気に因って中止。しかたなくローレライは、親友のドロシーとパリへ行きます。そこでリッチな鉱山主や、ガスの父親が雇った探偵などが彼女たちの旅行をハチャメチャに、そしてハッピーエンドへと導きます。

この映画で、何が一番、ゲイが喜ぶかと言うと、船の中で、ジェーン・ラッセル扮するドロシーがオリンピック選手のマッチョ集団と一緒に歌い踊るシーン。歌い踊るとは言え、マッチョ集団は、肌色のパンツ一丁で、音楽に合わせて、トレーニングやプールに飛び込んだりする、というのが何とも可笑しいです!このシーンを見るだけでも、観る価値ありです。

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South Pacific(南太平洋)

先々月の「サウンド・オブ・ミュージック」先月の「王様と私」と共に、ロジャース&ハマースタイン・コンビの作詞作曲作品。49年にブロードウェイで上演された映画化で、賛否意見は色々だけど、「魅惑の宵」や「バリ・ハイ」など名曲揃いです。(個人的には「あの人を忘れたい」"I'M GONNA WASH THAT MAN RIGHT OUTA MY HAIR" が最も好きなんだけど・・・。)監督は、「ピクニック」や、「サヨナラ」でアカデミー候補になったジョシュア・ローガンですが、もともとこの作品を舞台でも演出しています。

舞台は南太平洋のある島。フランス出身の民間人農園主エミールに、日本艦隊を監視するための案内役を頼もうと、ケーブル中尉がやってきます。エミールは看護婦ネリーに恋をしていますが、彼女はエミールの過去の結婚事実にショックを受け、彼の元から離れてしまいます。一方、島での土産売りのメリーに自分の娘を紹介されるケーブルですが、結婚になると自分の差別意識から、受け入れられません。エミールとケーブルは、日本軍の背後へと回りますが・・・。

この映画でのロマンス・グレイの美形男優、ロッサノ・ブラッツィは当時42歳!!!(『旅情』の時は、まだ40にもなっていない)「ローマの休日」のグレゴリー・ペックが、36歳だったことも含め、当時の西洋人男性が老けている、というよりはいかにダンディで大人っぽい色気を持っていたか、です。ゲイとしては、見習いたいもんです。

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Les Demoiselles de Rochefort(ロシュフォールの恋人たち)

先月の「シェルブールの雨傘」同様、ジャック・ドゥミ監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演、ミッシェル・ルグラン音楽のフランスで制作されたミュージカル映画がこれです。ドヌーヴの実姉、フランソワーズ・ドルレアックが双子の姉妹を演じているほか、「ウエスト・サイド物語」のジョージ・チャキリス、「雨に唄えば」のジーン・ケリーなど仏米の豪華俳優が競演しています。

年に一度の祭りがあるフランス南部の海辺の町、ロシュフォール。そこに住むソランジュとフランソワーズという美人双子姉妹は、いつか素敵な恋をしたい、と願っています。母が経営するカフェにやって来るオートバイの曲乗り二人組や、理想の女性像を描く水兵。姉妹と母が理想の男性と巡り会うまでを描いていきます。

驚いたことに、今年のリバイバルの時に「シェルブールの雨傘」よりも、この映画のほうに人気が集まったそうです。公開時よりも、後年、カルト的人気が出たという意味では「ロッキー・ホラー・ショー」に近いかも知れません。「シェルブール〜」もそうですが、この映画の色使いの美しいこと。60年代のファッションもまったく古臭くなく、むしろお洒落に感じさせてくれます。

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Chitty Chitty Bang Bang(チキ・チキ・バン・バン)

007を書いたイアン・フレミング原作の童話の映画化です。「メリー・ポピンズ」でブレイクしたディック・ヴァン・ダイクを主演に、同じく「メリー・ポピンズ」のスタッフ(作曲のシャーマン兄弟、振り付けのブロー&ウッドなど)。2002年には、ロンドンで舞台ミュージカル化され、客席の真上をバンバン号が飛んだようです。(残念ながら、僕は未見です・・・。泣)

発明家だが、なかなか日の目を見ないポッツは二人の子供と、彼らの祖父と4人暮らし。ポッツはある日、スクラップ寸前のポンコツ車を買い取り、改造して、その完成記念にドライブに行きます。そこで出逢った社長令嬢トゥルーリー。子供たちは、彼女と一緒に、ポッツが話す「飛行船でさらわれた祖父を助けるため、何でもできる魔法の車、バンバン号で悪漢に立ち向かう」という御伽ばなしに夢中になっていきます。

この不思議なタイトルは、この映画の主役でもある空想の自動車が発する音から付けられていますが、(このタイトルを付けたのは、故水野晴郎氏らしい)今、初公開されたら「チティ・チティ・バン・バン」とされるんでしょうか。

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Fiddler on the Roof(屋根の上のバイオリン弾き)

64年にブロードウェイの舞台で上演され、8年近くもの大ヒットとなった作品ですが、日本でも67年に森繁久弥主演で20年近くロングランされたことは有名です。監督はその後「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「月の輝く夜に」を撮ったノーマン・ジュイソン。

ロシア、ウクライナ地方で、牛乳屋を営むテヴィエは、厳しい妻と、5人の娘を持ち、戒律を厳格に守るユダヤ人。長女がテヴィエの反対を押し切り、仕立て屋と結婚、続いて次女は、逮捕される学生闘志を追って、シベリアへ、また三女はテヴィエが敵視するロシア人男性と駆け落ちをしてしまいます。村では、ユダヤ人への迫害はひどくなり、幼い娘二人を連れ、一家はニューヨークへと向かいます。

この映画の公開時、当時、イケメン男優として日本でブレイクしていたレイモンド・ラブロック見たさに、映画館に行きました。でも、登場シーンは、本当に少ない(笑)。「ウエスト・サイド物語」で知られるジェローム・ロビンスの振り付けは、この映画でも健在で、結婚式のダンス・シーンなど唸らせられてしまいます。「南太平洋」のロッサノ・ブラッツィにも驚きますがもっと驚くのが、この映画での初老とも思えるテヴィエを演じるトポルは、当時まだ30代。まったく信じられません。彼が主演した「フォロー・ミー」は、僕のフェイバレット映画の一本です。

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Evita(エビータ)

1978年に「オペラ座の怪人」「キャッツ」の作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが書き下ろしたものです。アルゼンチンのペロン大統領が政権を獲得した時代に、国民から支持された夫人エバを描き出しています。映画化に伴い、マドンナ、アントニオ・バンデラス、ジョナサン・プライスという名優が顔を揃え、先月も「ダウンタウン物語」で紹介したアラン・パーカー監督がメガホンを取っています。

アルゼンチンの田舎の貧しい家庭に生まれたエバは、15歳でタンゴ歌手の愛人として、家出をします。ブエノスアイレスに移った彼女は、パトロンを変えながら、ラジオの仕事から女優、そして国民的スターへと成長します。やがて、陸軍大尉ペロンと知り合いますが、その後、投獄されてしまう彼を民衆にラジオで呼びかけることによって、救い出します。そして、ペロンは大統領に・・・。彼女は聖母エビータへの道を歩き出します。

ロイド=ウェーバーの作品中、3本の指に入る名曲がズラリ。映画業界では、なかなかパッとしなかったマドンナが歌う「泣かないで、アルゼンチーナ」は素晴らしいし、バンデラスもその後の舞台ミュージカルの出演が決まるほど、見事なパフォーマンスを見せてくれています。

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8 femmes(8人の女たち)

ゲイだとカミングアウトしているフランソワ・オゾン監督の初ミュージカル作品。カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペール、ファニー・アルダン、ダニエル・ダリューなど、フランスの名女優たちが豪華競演しています。

舞台は1950年代のフランス。クリスマスを祝うため、雪に閉ざされた邸宅に家族が集うことになります。邸宅主のマルセル、その妻ギャビーと二人の娘、シュゾンとカトリーヌ。ギャビーの母と、ギャビーの妹オーギュスティーヌ。マルセルの妹のピエレット。メイドのルイーズと黒人の乳母、シャネル。マルセルが突然殺されてしまい、邸宅内の女たち、それぞれに嫌疑がかけられていくサスペンスとなっています。

この映画の見どころは、何と言ってもセットのカラフルな色使いに各々の女優が着るファッションの数々。まるで、50年代のファッション誌を見ている気持ちになります。出演者の中で、ピエレットはバイセクシャル、シャネルがレズビアン。彼女が「孤独は悲しい」と台所で歌う歌は、同性愛についての歌がしっとりと聞かせてくれます。

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The Producers(プロデューサーズ)

「ヤング・フランケンシュタイン」が大ヒットとなって一躍有名になるメル・ブルックスが68年に監督デビューしたのがオリジナル。ミュージカルではなかったこの映画を、2001年、ブルックス本人が楽曲を書き、ブロードウェイ・ミュージカル化。そして、改めてその時の舞台演出家スーザン・ストローマンがメガホンを取って、作られたのがこの映画です。

昔、ブロードウェイの大物プロデューサーだったマックス。彼のもとへやって来た会計士レオが帳簿を調べると、ミュージカルで失敗したほうが大儲け出来ることに気が付き、マックスは史上最低の舞台を作ることを決意します。最低な脚本家に、タブーとされる「ヒトラー」を書かせ、それを最低のゲイの演出家に仕事を依頼、さらにマックスのパトロンである老人施設にいる愛に飢えた老女たちを口説いてまわり、初演を迎えますが、これが大成功してしまいます・・・。

何と言っても、マックスを演じるネイサン・レイン、レオを演じるマシュー・ブロデリックは見ものですが、彼らと同じく舞台からそのまま役を引き継いだゲイ演出家のゲイリー・ビーチとその助手役のロジャー・バートのオカマぶりは本当に笑わせてくれます。これを観たあとは、68年のオリジナルも是非、ご覧ください。

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